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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 幾ら聡いとはいえ、所詮は世間知らずで育った初(うぶ)な娘である。まだまだ身も心も固い蕾であった。その固い蕾を膨らませ、花開かせるのもまた男としての愉しみでもある。今でさえ「信濃屋小町」と世間の眼をそばだてるほどの美少女だ。やがて花開けば、どれだけ艶やかな大輪の花となるだろう。美しい婚約者が身も心も大人になるのを、嘉平太は気長に待つつもりでいた。

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