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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 その瞬間、小文は泣きながら治助の胸に飛び込んだ。前と違って、治助はすっぽりと抱き込んだ小文の華奢な身体を力強く抱きしめた。
「ここに来れば、お嬢さまに逢えるような気がしたんです」
 治助の声が耳許で囁く。小文は歓びにその身体を慄わせた。涙が後から後から堰を切ったように溢れてくる。

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