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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 小文が思い悩んでいたその時、
「お嬢さま」
 と背後から囁く声がして、小文はそれが幻ではないかとさえ思った。我が身が始終愛しい男のことばかり考え、その面影ばかり追っているゆえ、幻の声を聞いたのだと思った。
 小文は微かな予感に胸を慄わせながら、恐る恐る振り返った。
 眼前にいたのは、たった一人の恋しい男。

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