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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

 治助とめぐり逢った時、何故、あんなにも魅(ひ)かれたのか、今なら判る。治助の魂を傍に感じる時、小文は自分の欠けていた一部を漸く取り戻したような心持ちになるのだ。まるで、その部分だけ欠けていた身体の一部がやっと完全になれるように、治助と一緒にいると、空白がぴったりと埋められる。
 だからこそ、小文は治助に魅かれずにはおれない。小文にとって、治助は漸くめぐり逢えた魂の片割れに違いなかった。

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