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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

「私にとっては、あなただけが真実なの。淋しさも愛しさもあなたがいたから。たとえ、何もかも失ったとしても、治助さんがいれば怖くない」
 そう、父や母を哀しませることになっても、すべての人に後ろ指をさされることになったとしても。
 治助さえ傍にいてくれれば、乗り越えてみせる。どんな苦しみでも、治助と一緒にいられれば、平気だ。治助を失うことになれば、愛しさどころか淋しささえ感じることはできないだろう。あらゆる感情を失い、小文はきっと呼吸をすることすら、忘れてしまう。

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