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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

小文、お前はとにかく今日から秋の祝言の日まで一歩たりとも部屋から出さない。治助も早々に暇を取らせる」
「そんな、お父さま、お願いです。私の話を―」
 小文は父に懸命に訴えたが、惣右衛門は頑として強硬な態度を崩さなかった。それ以上話をしたくもないといった様子で、父は部屋を出てゆき、取り残された母はすすり泣いていた。小文は絶望的な予感に、声も出なかった。

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