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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

 小文は井戸から桶で汲み上げた水をそっと脚にかけた。井戸の水は心地よい冷たさを保っている。今も少しだけ火照りを帯びた脚にその冷たさが気持ち良かった。朱の襷がけをした小文は着物の裾をからげている。剥き出しになった白い脚が春の光に照らされて眩しかった。井戸端で脚を洗う小文はまだ十五歳ながら、爽やかな色香が匂い立つようだ。この分では、あと一、二年もすれば、更に大輪の花が開くように美しくなるに相違なかった。

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