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「月花様…？」


ふと月花に呼ばれた様な気がして、
ユーリは手を止めた。


「どうかしましたか？ユーリ」


ユーリの傍らで
書類に目を通していたジルが尋ねる。


「……いえ」


(月花様に呼ばれた様な気がしたんだけど…)


気のせいだと思い、
止まっていた手を動かして
書類整理を再開させた。

ダンスパーティが開かれている時間帯に
ユーリはジルと共にたまっていた書類の
整理をしていた。



「…これで終わりですね、
ようやく書類が片付きました」


分厚い書類の束を机の上に置き、
ジルが言う。


「私はこれから国王の名代として
隣国へ参ります。
朝まで帰れないかと思うので、
プリンセスのことを貴方に頼みますよ、ユーリ」


そう言うとジルは執務室を後にした。





ジルに遅れて執務室を後にしたユーリは月花の部屋へと続く廊下を歩いていた。


(もう少しで
パーティが終わる時間だよね。
月花様の着替えと
お茶の準備をしておかなきゃな…)


そう考えを巡らせながら
月花の部屋の前まで来ると、
扉の前に人影をみつける。


「……アラン様…？」


ユーリの声に振り返ったアランの腕の中には
横抱きされた月花の姿があった。


「…！月花様！？どーしたの…！」


月花はユーリの声に反応することなく、
アランの腕の中でスヤスヤと眠っていた。

眉間にシワを寄せてアランが答える。


「こいつ…酒飲めねーのに
ワインを一気飲みしたっぽい。
といっても一緒にいた貴族に
すすめられて飲んだらしいけど…」


部屋の扉を開けベッドの掛け布団を
ユーリが捲ると
アランが月花をシーツの上に
そっとおろした。


「怪我とかしてないから安心しろよ。
こっからはお前に任せるから
プリンセスを頼むな」


そう言ってアランは部屋を後にした。