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　何しろ、幸は男爵家に生まれ育った令嬢なのだ。漁師の妻としての心構えどころか、一般の家事の心得すらないのは至極当然のことであった。幸が今、干したのは亮平が毎日海へ出て漁をする際に使うものだ。いわば、漁師の亮平にとっては生命の次に大切といっても良いものなのだ。亮平にとって大事なものは幸にとっても大事なものと思い、幸はいつもこの網を扱っている。