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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第5章 第二話 【めざめ】 旅立ち

 八月の末は日中はまだまだ残暑は厳しいが、夕刻ともなれば、吹く風にもわずかに秋の気配が忍んでいる。北の海辺のこの小さな村に、秋は確実に訪れようとしていた。
 庭とも言えないほどの猫の額ほどの庭から家に戻ろうとしたそのときのことだ。
「幸さん」
 控えめに呼ばれ、幸はハッとした。この遠慮がちな物言い、聞き覚えのある懐かしい声―。

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