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　幸は返す言葉もなくて、うつむいた。進一郎は伯爵家の長男だ。幸の実家の男爵家よりは格上の名家であった。その跡取りよりも身分違いの漁師を結婚相手として選んだ。だが、幸が亮平を選んだのは、身分などは一切関係ない。幸が亮平を愛していたからだ。つまり、進一郎を愛してはいなかったということになる。