テキストサイズ

空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第2章 第一話【空の記憶】~運命の嵐~

 物心つく以前から、幸は父親っ子だったように思う。その点、やはり父は娘には甘く、いくら幸より後に生まれた弟の凛太郎が幼くとも、父は凛太郎には殊に厳しかった。昨日も本当なら父も港まで見送りに来るはずだったのだが、生憎と都合で来られなかった。そのことを、父もたいそう残念がっていた。その分、父高友とは邸を出る直前、十分に名残を惜しんだけれど、やはり、あのときの父の淋しげな表情(かお)をどうしても思い出してしまう幸であった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ