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　弥生からの受け売りを話したまでにすぎなかったが、そんな幸を見つめる亮平の横顔にフッと淋しげな翳(かげ)がよぎった。だが、うつむいて針と糸を動かしている幸には判らない。
「クローバーか。幸は学校へ行っていただけあって、色んなことを知っているんだな」
　亮平の声には一抹の淋しさが込められていた。幸は四つ葉のクローバーの葉の上に、ちっちゃな天道虫を入れることにした。元々の図案にはないものだが、欧米では天道虫も幸福の象徴(シンボル)であるという。亮平と二人でささやかだけれど幸せな日々を送りたいという幸の願いがこめられている。