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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第5章 第二話 【めざめ】 旅立ち

「幸は俺のことが嫌いなのか?」
 問われ、幸は力なく首を振った。大粒の涙がポロポロとこぼれ落ち、白いすべらかな頬を濡らす。亮平は小さな溜め息を洩らし、その涙の雫をそっと指で拭った。
「それとも、昼間、婚約者と再会して、昔の男を思い出したのか」
 その問いには、幸は大きく首を振った。
「違う、違います。進一郎さんのことはお兄さまのように思ってきたから、好きだとか愛しているとか、そんな気持ちではないの。亮平さんへの気持ちとは全然違うわ」

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