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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第5章 第二話 【めざめ】 旅立ち

「―!」
 思いつめた眼で幸を見つめていた亮平が突然、幸をその場に押し倒した。
「いやっ」
 幸が手足をばたつかせて抗う。
「幸、好きなんだ。判ってくれ」
 亮平の動きは最早止まらなかった。打ち寄せる波の音がひそやかに夜の底に響いている。その音を耳にしながら、幸は涙を流し続けた。北の海辺の小さな村の短い夏が終わろうとしている、静かな夜のことであった。

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