テキストサイズ

空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第6章 第二話 【めざめ】 再会

 幸が女工として働くようになってからふた月ほどが過ぎた。季節はいつしか晩秋を迎えていた。樹々の葉は色づき、冷たい木枯らしに舞い散った。ある夕方、幸は工場から近くの宿舎まで歩いて帰っていた。石畳の道をわくらばが秋風に吹かれてゆく。頼りなくどこまでも吹かれてゆくその様子がまるで自分のようだと思いながら、そのゆく先を眼で追った。と、ふいに背後から肩を叩かれ、幸は思わず飛び上がらんばかりに愕いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ