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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第6章 第二話 【めざめ】 再会

 弥生は、溢れようとする涙をそっと押さえた。幸は着物の袂から一枚のハンカチを取りだし、そっと差し出した。それは、亮平の許を去る前夜、幸が刺繍をした白い小さなハンカチであった。今の幸は、かつて女学生であった頃からは考えられないような粗末な着物を身にまとっている。だが、今の自分を弥生の前で恥ずかしく思い卑下する気持ちは、不思議と微塵もなかった。

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