テキストサイズ

空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第6章 第二話 【めざめ】 再会

 だが、現実として、一人で子どもを生んで育てることは至難の業であった。今でさえ、幸一人が暮らしてゆくのに精一杯なのだ。この上、赤子を生んで育てながら、どうやって生きてゆけというのか。もし生んだら、親子二人で飢え死にするだけだろう。二日後、幸は再び病院を訪ねた。先日の老医師に堕胎について訊ねると、月数が立ちすぎているので難しいという応えが返ってきた。無理に流すことはできなくもないが、母体にも大きな危険を伴うとの説明を受け、幸はまた落ち込んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ