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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第6章 第二話 【めざめ】 再会

「どうして、どうしてなの」
 幸は畳に身を投げだして泣いた。幸は亮平の子を宿していたのだ。たった一度の契りで、しかも無理に犯されて身ごもってしまったのである。既に五ヶ月近くになっていると老齢の医師は淡々と告げた。生まれるのは来年の五月頃だという。言われてみれば、腹部がはやわずかに膨らみかけているのが自分でも判った。ここに、新しい生命が育っている。触れてみれば、実感できるような気がした。

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