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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第2章 第一話【空の記憶】~運命の嵐~

 口に含むと、外側のチョコレートが溶け、内に入ったブランデーがしっとりと口中に甘くひろがる。まさに〝夢の国から来た奇跡のお菓子〟だった。
 初めてチョコレート・ボンボンを食べた時、幸が父にそう言うと、父は声を上げてさも楽しげに笑ったものだ。そんな珍しい舶来品を口にできる幸や弥生がどれだけ恵まれた環境にいる少女かは判るというものだが、たとえ、さして珍しいものでなくても、弥生は心から歓んでチョコレート・ボンボンを食べるだろう。弥生は、そういう娘だった。

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