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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第2章 第一話【空の記憶】~運命の嵐~

「大丈夫ですからね、お嬢さん。これは最新式の船ですから、容易く沈んだりはしませんから」
 四十歳ほどの船長が穏やかに幸に声をかけてくる。その態度には、つとめて不安に怯える客たちの心を軽くしようという気遣いが窺えた。だが、乗務員たちの態度が殊更明るさを装っていればいるほど、事態はさし迫ったものであることを告げているように思え、幸の心は良からぬ想像で重く押し潰されそうだった。

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