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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 だが、今の自分は一介の教師であり、到底そんな力はないのが実状である。それに引きかえ、自分は何と恵まれた環境にあったのかと今更ながらに思わずにはおれない。男爵家に生まれ育ち、何の不自由も知らず女学校にまで進学し、青春を無邪気に謳歌していた。
 春まだ浅い日、ふいに教室を訪ねた浩三が「知らないことは罪だ」と言ったけれど、確かに無知はある意味で罪深いことだと思う。

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