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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第2章 第一話【空の記憶】~運命の嵐~

 次に一瞬、父の優しげな笑顔や母の憂いを秘めた顔が浮かんで消えた。
 いつのときでも控えめに傍にいて微笑んでいた許婚者のひどく切なげな横顔がよぎってゆく。出発の前日、遠慮がちに求めてきた口づけに応えられなかったことを少しだけ後悔した。
―お父さま、お母さま! 進一郎さま―!!
 心の中で叫び、今度こそ幸の記憶はそこで、ぷっつりと途切れ、完全な闇に呑み込まれた。

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