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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

「お母さま、もうお母さまは、お家に帰ってこないの」
 あどけない声で問われ、幸は刹那、返事に窮した。
「いつか―」
 言いかけて、言葉を呑む。いつか―など、ありはしない。いつになっても、幸があの家に戻ることは二度とないだろう。だが、眼の前の幸太郎はその言葉にかすかに期待を繋いだらしかった。

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