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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 と、幸はふと懐中時計を懐から取りだした。 刻の経つのは早い。時計の針は既に六時近かった。時間は無情にも縁薄い母子を再び引き裂こうとしていた。
「幸太郎、もう時間です。戻らなければならないわ」
 幸の言葉に、幸太郎が急にうなだれた。
 やがて弾かれたように顔を上げた。

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