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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 まだしゃくり上げる幸太郎を連れ、食堂を出た。勘定をする時、女主人が気の毒そうな顔で幸と幸太郎を見ていたが、何も言わなかった。恐らく、彼女は大方の事情は察したに相違ない。たとえ詳しいことは判らずとも、幸太郎と幸が親子で、理由あって離れて暮らさざるを得ないと見抜いただろう。
 この村の人は余計なことは一切言わないし、触れようとしないのが幸には何よりありがたい。

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