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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 病室を出た廊下の突き当たりに待合い所のようなスペースがある。長椅子が幾つコの字型に並んでおり、浩三はそこに幸を連れてゆき、座るように促した。だが、幸は座ろうとはせずに、すぐに浩三に訊ねた。
「教えて下さい。何があったんですか」
 幸は縋るような眼で浩三を見た。
 浩三は沈痛な面もちであった。
「あの子は―幸太郎は、幸に逢いにゆこうとしたんだよ」
「え―」

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