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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 ただ一つの救いは、幸太郎が旅立った先には、亮平がいるということだった。それは哀しい事実ではあったが、これでこの世で縁薄かった父子は、晴れて親子の名乗りを上げることもできる。亮平は幸太郎と一緒に遊んでやってくれるだろう。だから、幸太郎の淋しいさもいくばくかは少なくなるはずだ。何より、実の父親が側にいるのだから。
 幸は幸太郎の葬儀には出なかった。今頃になって、母親面をして出席できるものではなかった。影ながら野辺の送りを見送った後、幸は再び汽車に乗り海辺の村へと帰った。

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