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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第12章 第四話【縁~えにし~】 白き波の向こうに 

~白き波の向こうに~

 幸は一人、海岸を歩いていた。
 その手には撫子の花束がある。庭に咲いていたものを朝、摘んだのだ。亡き亮平が愛した花である。波打ち際まで来ると、薄紅色の可憐な花を力を込めて投げる。花たちは直に押し寄せた波に押し上げられ、水面に呑み込まれた。

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