テキストサイズ

空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第16章 番外編第一話「潮騒の詩」~海神の誓い~ 

~海神への誓い~

 亮平と澪の忍び逢いはそれからも続いた。たいていは亮平の海辺の家で、時には月夜の海辺で二人は互いに狂おしく求め合う。
 亮平が村の長でもあり、網元でもある濱崎熊五郎に呼び出されたのは、熱くひそやかな逢瀬がふた月も続いたある日のことであった。北国の短い夏は、そろそろ終わろうとしており、あちこちで虫の音が早い秋の夜を彩っている。その虫のすだきに混じって、潮騒のざわめきが今夜もかすかに聞こえていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ