空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第17章 番外編第二話【薔薇ものがたり】~或る画家の絵~
織部の名前が次に歴史上に現れるまでには実に数年を待たなければならない。京都から風のように姿を消して数年後、織部は再び京都に舞い戻る。織部が残した膨大な日記によれば、その間、彼は日本各地を遊学して歩いていたという。その間に大勢の人々と出逢い、多くのものを学んだことが織部の絵を飛躍的に優れたものにした。織部は京都に戻って以後、精力的に絵筆を取り、天寿をまっとうするまで次々に秀作を残した。それらの作品の中には今日に伝えられているものも多い。