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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第17章 番外編第二話【薔薇ものがたり】~或る画家の絵~

「いいえ、私の方こそ考え事をしておりましたので、ぼうっとしていたのですわ」
 青年は優しげな細い眼を更に細めた。
「あなたも織部が好きなのですか」
「え、ええ」
 弥生は曖昧に頷いた。初対面の男に唐突に話しかけられて、困惑したのだ。この時代、良識ある家庭の子女であれば、むやみに男と二人きりで話をしたりするものではないと躾られているのが普通だ。

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