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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第17章 番外編第二話【薔薇ものがたり】~或る画家の絵~

 白磁のようなすべらかな肌、まだ成熟する一歩手前の少女の肢体には爽やかな色香が漂っている。伊右衛門はキャンバスを持ってくると、憑かれたような熱心さで弥生をスケッチし始めた。
 静かな、熱い時間が二人を取り巻いて流れてゆく。伊右衛門はひたすら弥生を眺め、鉛筆を走らせ続けた。降りしきる雨の音に降り込められ、静けさはひそやかな熱を孕んだ。

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