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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第18章 番外編第二話【薔薇ものがたり】 薔薇の乙女 

「―」
 弥生は泣きながら、伊右衛門の腕に飛び込んだ。優男に見える伊右衛門の腕は存外に逞しいことを、この時弥生は初めて知った。
「君の気持ちを大切にしたいんだ」
 泣きじゃくる弥生の肩にふわりと着物がかけられた。むき出しの肩に温かな肌触りがする。同時にほのかな男の香りが弥生を包み込んだ。それは伊右衛門の匂いだ。伊右衛門の着物をかけてくれたのだろう。

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