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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第18章 番外編第二話【薔薇ものがたり】 薔薇の乙女 

「君と出逢ってから、俺は織部の気持ちがほんの少しだけ判る気がするようになった。多分、織部もこんな気持ちで―手を伸ばせば届きそうなほど近くにいるのに、けして触れてはいけないただ一人の女性を想い、観音像を描いていたのではないだろうか」
 伊右衛門の声が弥生の心の奥底に染み込んでゆく。
 雨は相変わらず降り続いていたが、弥生の胸を温かいものが満たしていた。

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