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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第18章 番外編第二話【薔薇ものがたり】 薔薇の乙女 

 最早、頬を伝い落ちるのが涙なのか雨なのかさえ弥生には判らない。そんな弥生の肩にそっと分厚い手のひらが置かれた。
「弥生さん」
 弾かれたように顔を上げると、間近にしゃがみ込んだ伊右衛門の笑顔があった。何より愛しい男の顔だ。
「これは夢なの」
 弥生が呟くと、伊右衛門は笑顔で首を振った。

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