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近くて遠い

第20章 探り合い

───────…


「あぁ、雨の日に…スリップしたトラックと衝突して」


2ヶ月前…


雨の日…



まさかっ


あの日じゃ…



「おい、どうした。
お前さっきからおかしいぞ。」



少し怒ったような口調で光瑠さんが私の肩を掴んだ。


「っ……」



「おいっ!」



「何でも…ありません。」


心臓がドキドキしていた。

もし、
あの時に事故にあったのなら…


そのあと
光瑠さんに契約を持ち掛けられて、ふらふらとあの場所に立ち寄った時、
要さんが私の傍を素通りしたのは…


忘れられたんじゃなくて、


"見えていなかった"から……?



いや、
でも、

私を覚えていてくれているのかは分からない…


でもっ…


もし…もし…

覚えてくれていたらっ…



渦巻く……


消えかかった気持ちが

また、沸き上がって…



「真希っ!!」



遠くに思いを馳せていると、久しぶりに、光瑠さんの怒鳴り声が頭に響いた。



「そんな、虚ろな目をするなっ!」


光瑠さんが腰を低くして、私に視線を合わせた。



「俺を見ろっ!」



ドキっ──

と心臓が鳴った。



光瑠さんの真っ直ぐな目が私を捉える。


漂って、

ふらふらとしている私を


繋ぎ止めるかのように。



「何を考えてる…」


光瑠さんは声を再び優しくして、私を見つめたまま質問した。



「何も……」



そうとしか言いようがなかった。



「うそをつくなっ!!」


「んんっ…」


光瑠さんはやはり少し怒ったように、私の唇を塞いだ。


しっかりと後頭部を掴まれて身動きが出来ない。



動揺している…



私の心が…


大きく…



「んはぁっ…」


解放された唇から、
吐息が洩れる…



「……今夜お前を抱くと俺は言ったはずだ…」


光瑠さんの言葉にハッと息を飲んだ。



確かに彼は言っていた。


朝、長いキスをした後に…


頭が要さんでいっぱいになったせいで忘れていた…



「まさか忘れたなんて…言わないよな…」



耳元で囁かれ、


動揺する身体を必死に静める。

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