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近くて遠い

第21章 近くて遠い

────────…

社長の大事な人に


何を言っているんだろう…


とすぐに後悔した。



でも実際、
真希さんと話しているととても落ち着くのだ。


声が似ているというだけでなく、


物腰柔らかな口調と


独特の間の取り方、


話していてとても和む…





要はふぅ、と息を吐いてゆっくり立ち上がった。


「そろそろ戻ります。
逃げてばっかりもいられないですからね」


風が冷えてきた。


あまり女性を冬場の外に長居させてはいけない…


まして社長の大事な人ともなれば…



「かなめ!帰るの?」


と前方から隼人の声が聞こえる。



「あぁ。
隼人も寒くなってきたからお姉さんと早めに中に入るといいよ。」



要の言葉に、隼人が大きく頷いて返事をする。


「また来る?」


「……どうかな。」


北風が強く吹いて身体を冷やす。



「えー!来てよっ!」



と残念がる少年が、可愛らしくて要は笑みを洩らした。


真希さんの弟だけある。

素直で、とても可愛らしい…


「……また、逃げ出したくなったら、いらしてください…」



傍から聞こえた小さな声がした方に要はハッと顔を向けた。



「……いいんですか?」



「もちろんです……こんなに会社と近いんですから……」



その言葉が何故か異様に嬉しくて、要はほころぶ口元を手で抑えた。

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