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近くて遠い

第22章 距離

────────…

「え…?」



すっかり夜も更けた頃。


私は愛花ちゃんの言葉を聞いて、思わず聞き返した。


「真希様ご存知なかったんですか?」



「うん…だって、そんな事言ってなかった…」



しばらく光瑠さんの帰りが遅くなるだなんて…



「さ、昨晩、二人で過ごされてましたよね…?」



頬を紅らめる愛花ちゃんに、つられて私も紅くした。


思い出すシャワールームでの濃厚な絡み…



惜し気もなく出してしまった自分の淫らな声を思い出して、とても恥ずかしくなった。




「でっ、でも、そんなことは聞いてないよっ…」


そのあと、

光瑠さんは恐ろしく優しくて、私の身体を拭くと、ネグリジェまで着せてくれてベッドまで運んでくれた。

私は疲れてしまって…


『ゆっくり寝ろ…』て言うから、私は光瑠さんの腕の中ですぐに寝てしまったのだ。


そして起きたら、もうすでに光瑠さんはいなかった。

隣で寝ていたあとはあったけど、温もりはもうなくて…



「つくづく不思議なお二人ですね。」



愛花ちゃんはソファーに座りながら、ふふふと笑った。


「不思議…?」



「はい。」



何がどう不思議なのか分からなかったけど、
聞いても分からなそうなので私は黙っていた。



「………何時に帰るの?」

「ご主人様ですか?」


「うん…」


すごく、
光瑠さんに会いたいと、
そう思った。


じゃないと、
自分がいけない方向に行ってしまいそうな気がして…



「すみません…それは分かりませんが、パリ行きが控えられているので…」



「パリ…?」



愛花ちゃんの言葉を遮って再び私が言った。



「まさか、それもお聞きになってないんですか?」



びっくりした様子の愛花ちゃんの問いに、私は小さく顔を横に振る。



「…そうですか……
ご主人様はお仕事で一週間のパリ滞在を控えておりまして…」



「一週間…」



そんなに

離れてしまうのか。


どうして──


「どうして私に言ってくれないんだろう…」

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