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近くて遠い

第22章 距離

どうでもいいと思われているのだろうか。


また光瑠さんの気持ちが分からない…



「忙しくて言いそびれただけですよ」


愛花ちゃんの励ましも私の不安を拭うことが出来ない。


私と光瑠さんの間には


極端に言葉が省略されている。


たまに洩れる言葉を


一生懸命に手繰り寄せて…


「あら、もうこんな時間…」



愛花ちゃんが丁度0時を知らせる時計を見て言った。


「本当だ。
ごめんね、こんな夜遅くまで…」



「いえいえ、私真希様とお話するの好きなので」


そう愛花ちゃんはにこっと笑ってソファーを立つ。



「では、また明日。」



「うん、おやすみ。」



愛花ちゃんは丁寧に頭を下げると静かに私の部屋から出ていった。


ゆっくりとベッドに身体を横たえた。



今日の事を振り返ろうとして、それは良くないと思って頭を振る。



天井に目を写した。



「私は今、幸せ」



自分に言い聞かせるように口に出して言う。


もう寝よう。



そう思って瞼を閉じると、時計の針の音が聞こえてきた。


───────視覚のない世界は欠如の世界じゃありません



要さんの声が頭に響いてハッとした。



揺れる──


ぐらぐらと…不安定に。


大丈夫。



私は光瑠さんの婚約者で

彼は光瑠さんの部下。



新しい立場で、

それなりの関係を築けば良い。


「光瑠さん…」


布団を被って小さく呟いた。


早く帰ってきて…


しっかり、私のことを抱き締めて…


その日は
なかなか寝付くことが出来なかった。



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