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近くて遠い

第22章 距離

「べ、別に私は蔑視など…」


「気付いてないのなら余計たちが悪いわ!」


説教されていたのが、今度は説教する立場に反転している。


私の勢いに圧されて黙ってしまった古畑さんに尚も私は続けた。



「光瑠さんだけじゃなくて古畑さんまでそんな…。
メイドさんたちの働きがあるからこの無駄に広い屋敷の手入れが行き届いているんです!」



「ま、真希様…落ち着いてください…」


何とか私を制そうとする古畑さんの額に汗が光るのが見える。



「私は落ち着いてます。
今は21世紀。そんな歴史の教科書に載っているような考えは捨て去って下さい!」



あまりに勢いよく話したせいで、肩が上下するほどあがった息を私はゆっくりと整えていると、後ろからパチパチパチ…と拍手が聞こえて、ふと振り返った。



「えっ…?」


そこにはいつからそんなに集まったのか、分からないくらいのメイドさんたちが目をうるうるさせて、手を叩いていた。


「真希様っ!一生ついていきます!」



と一人のメイドさんが私の手を握ると、他のみんなも私も私もと、囲っていく。


「えっ……ちょっと…なにこれっ…」



慌てて古畑さんに目をやると、彼は私が見たこともないくらい大きな口を開けて笑っていた。


「ちょっと、古畑さんっ!?」



「いやぁ、やられました…ぐさぐさと…真希様、あまり老人をいじめないで下さい。」



と優しく微笑む古畑さんに、私は少し言いすぎたとひどく後悔した。


「す、すみません…
つい…」


そんな私を見て古畑さんがより笑った。


「私たちの気持ちを代弁してくださって、ありがとうございますっ!」


と近くにいたメイドさんがぽろぽろと泣き出した。



待ってー!

これどういう状況っ!?


「別に代弁だなんてっ、思った事を言っただけで…」

「すっかり私は悪者になってしまった…」


と古畑さんが頭をかく。


悪者だなんて…


「そんなつもりはなくて…」

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