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近くて遠い

第22章 距離

随分と甘えてくる真希に光瑠は戸惑う。


そんなに寂しい思いをさせてしまったのだろうか…


などと考えるのは、やはり自惚れなのか…



「真希…あまりくっつくと何を言ってるか分からない」


あくまで優しく声を掛けるが真希はより抱き着く力を強める。



まぁ……

何を言ったのか知りたいが…

これはこれで気分がいい──


そんな風に半ば諦めかけた頃、真希が真っ赤にした顔を光瑠に向けた。



「…ん?」



何か言いたげな真希の瞳を光瑠はじっと見つめて、真希が口を開くのを待った。



「ひっ、光瑠さんもっ……私に会えなくて…寂しかったですかっ…?」



その言葉に、光瑠は息が止まりそうなほど心拍数が速まった。



真希は耳まで紅くして再び光瑠の胸に顔を埋める。



何をそんな当たり前のことをっ──


俺は、もう真希の部屋を出た瞬間から恋しいというのに──



「そんな質問は、聞く意味のない質問だっ…」




光瑠もまた顔を紅くして乱暴に答えた。


こいつは分かってない…


今どれだけ俺の心が真希でいっぱいか…



「っ…ならっ…どうして、何も教えてくれないんですかっ…パリにっ、パリに行くんでしょっ…?」


真希が再び光瑠の顔を見上げる。


何故伝えなかったか──

そんなの

言ったときの真希の反応が怖かったからに決まってる──

自分のパリ行きを


寂しがるか…



…………喜ぶか。


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