テキストサイズ

近くて遠い

第23章 信頼関係

「お姉ちゃんは僕と結婚するんだよ。」


「っ!?なんだ突然。」



光瑠は目を丸くする。


脈略のない話の振り方…
これだからガキは嫌いだっ──


「だから…」


隼人は土にまみれた光瑠のズボンを掴んだ。


「おねえちゃんにチュウしていいの僕だけだからっ!」


「はっ!?」



隼人の発言に、光瑠は顔を紅くした。


そしてハッとして隼人の腕を掴んだ。


「お前、さっきの確信犯だろ。」


真希とキスする寸前で隼人が現れお預けをくらったことを光瑠は大人げなく根にもっていた。


「カクシン……なに?」



「もういい…」


ガクッと光瑠は項垂れて、隼人の腕を離した。


「ねぇ、ひかる次いつ遊べるー?」


「次はないっ!」


「えぇ、やだやだ、また遊ぶー!」


早足で歩く光瑠に隼人は息を切らしながら追い掛ける。


「他のやつと遊べ。俺は疲れてるんだ。」


寝不足でズキズキしていた頭痛がさらにひどくなっていた。


「じゃあ、かなめに明日ここに来てって言ってー?」

「かなめ……?」



かなめって…関根か…?


光瑠は隼人の言葉に足を止めた。


「そう、かなめー!」


「要って、背が高くて黒髪で………ステッキ持ったやつか…?」



「そうっ!」


と光瑠の問いに隼人は元気よく答えた。


「また来るってこの前言ってたのに来ないんだー!おねえちゃんは仕事で忙しいから仕方ないって…」


シュンとする隼人を、光瑠はじっと見下ろした。


確かにこの庭は会社と近いこともあって、
社員にも休憩所として出入りを許可していたが…


そうか…

関根が…


「分かった…伝える。」


「ほんとにー!?ありがとう!」


キラキラした笑顔を向ける隼人を光瑠は眺めた。


関根が自分の知らない所で真希と会っていたことに、少し光瑠は戸惑った。


だが──


硬派な関根のことだ…

別に心配することはない。


それに…

あいつには一途に想う人が…


────────恋に落ちました


要の言葉が再び響く。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ