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近くて遠い

第23章 信頼関係

嫉妬深い光瑠も特に何を疑うこともなく、そのまま隼人と真希の元へ帰った。



「光瑠さん、泥だらけじゃないですかっ!」


光瑠の姿を見るなり真希はその泥を叩いた。


「ひかる転んだんだよー!」


「っ…お前なぁ!」


ケラケラ笑う隼人をギロっと光瑠が睨み付ける。


だが、そんな光瑠に気付きもせず隼人は嬉しそうに笑っていた。



「転んだんですか…?」


口元を緩めて真希が光瑠を見上げた。


「っ…黙れっ!」


光瑠は説明するのも照れくさくなって真希の隣にどかっと腰を下ろした。



「光瑠さん。」



「ん。」


真希の問いにそっけなく答える。



「ありがとうございます…」


とびきりの笑顔を見せた真希に、光瑠の心臓がトクン──と鳴った。


「ちょっと走りたい気分だっただけだ。」


「ふふ。」


優しく笑う真希を光瑠はじっと見つめた。



ゆったりとした時間が流れ始めると、


光瑠は再び目を閉じて、真希に顔を近付けた。



「ひっ、光瑠さんっ!」


「なんだ…」



唇を近付けながらそれに答えるが、真希は背中を反らしてそれを避ける。


「何故、避ける…」


「は、隼人がいるからっ…」



その言葉に光瑠は目を開くと、自分をじーーっと見つめる隼人と目が合った。



「ったく…!」


光瑠は渋々顔を離すとポケットで震えるケータイを取り出した。



「ん。あ……分かった、すぐ戻る。」


それだけ言って光瑠はケータイを再びしまった。


「戻られるんですか…?」


「あぁ、また夜まで仕事だ。着替えてすぐいく。」



「……そうですか。」


少し寂しげな真希の頭を光瑠は優しげに撫でた。


「おねえちゃんっ!」


そんな二人の甘い雰囲気を壊すかのように隼人が叫ぶ。


「どうしたの?」


隼人に呼ばれると自分をそっちのけにする真希に、光瑠は少しムスッとして見ていた。




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