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───────…

「……ええ、キレイですよ。」


その言葉を聞いて、要は少し救われたような気持ちになる。


「そうですか…」



良かった。


やっぱり、

今日の空は、澄んでいるのだろう…


要はぼんやりとした青空の記憶を思い起こして、頭の中で綺麗な青空を広げた。


「……要さん。」



彼女は、出会った時から下の名前で呼んでくる。


それに特別な意味はないのだろうが、何となく、心を許してくれているような錯覚がして、要はそれを気に入っていた。



「はい。」


声がする方に顔を向けて要が返事をする。



「なんか…

無理してらっしゃいませんか…？」



「っ…」



その言葉が要の胸を突き刺した。


無理するな、ともう何度人に言われたのだろう？


うんざりするセリフをなるべく言われないように、ずっとずっと努力して…


「無理なんかしてません」


少し言葉尻を冷たくして要は答えると、真希が、あ、と声を洩らした。



「どうかしましたか…？」

つい冷たく言い放ってしまった事に反省しながら、要は今度は優しく真希に問う。



「いや、なんか、こういうことか…と…」


「……？」


よく意味が分からない真希の言葉に要は首をかしげた。


「こういうこと…とは？」




「あっ、なんか、同じような事が前あって…」


やはり要領を得ないたどたどしい真希の言葉を要は黙って聞いていた。


そしてまた、そのしゃべり方にあの日の口ごもる少女を重ねる──



「すみません、なんか意味分かんないこと言っちゃって…」


「……いえ、それで…？」

要は謝る真希に言葉を促す。



「私もよく、無理してるでしょ、とか、無理するなって言われるんです。」



真希の言葉の端に隼人が庭を駆ける足音を要は耳で拾っていた。



「……でも、私は無理してるつもりないんです。だから、『無理なんかしてません』って、返すんですけど…」


その言葉を聞いて、要は少し目を見開いて笑った。



「僕と一緒だ。」



「そうなんです…」



その会話の間に

鳥が小さく鳴く声が響いた。