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近くて遠い

第27章 出発

───────…


「社長、飛行機のお時間が…」


背後から聞こえた酒田の声に光瑠はギュッと目を瞑った。


離れたくない──


いっそ真希もこのままパリに…


「……気を付けて。」


か細い声で微笑んだ真希が、スルリと腕から抜けて行った。



「あぁ。」



キリがない。

自分が歩き出さねばいつまでだって、ここにいてしまう…


光瑠は素っ気なく返事をして真希に背を向けた。



今生の別れという訳ではないのに、

弱った真希を置いていくことがひどく光瑠の胸を痛めた。


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