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近くて遠い

第27章 出発

茶色よりも薄い光瑠の綺麗な髪が無造作に乱れる。



酔っているからなのか、

あまり自身の事を話そうとしない光瑠が、真希の事を話しているのが酒田にはとても珍しく感じた。



こんなにも彼が乱れるほど強く想われている事を、彼女は知っているのだろうか…


「……帰りの飛行機、一つ早くしますか?」



酒田の提案に光瑠は目を見開いて酒田を強く見た。



「出来るのかっ…?!」



「交渉も順調ですし、
元々時間に余裕を持って買っていたので…」



「頼むっ!」


切実なその瞳に、酒田は、はいと笑顔で答えた。



光瑠はスパークリングワインを飲み干し、もう一杯頼むよう酒田に言った。



ふぅ…と吐いた息が熱を帯びて眠気を誘う。


───────早く帰って来てくださいっ



叶えられぬ願いをされたと思ったが、それが叶えられそうだと分かった途端、
今まで以上に日本に帰りたくなった。



傍にいてやりたい…


いや、
なにより自分が
真希を抱き締めたい…



パリから戻ればしばらく仕事が落ち着く。


そしたら、真希と過ごす時間も増やすことが出来る。


少し想像しただけで、光瑠の口元が綻んで、それが酒田にバレぬよう慌てて手で隠した。



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