無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

────────…

要さんの急な問いに、
私は動揺した。


バレてるっ…？


「いっ、いいえ…」


今日の要さんは、
何だかとても勢いがあって、不安定な私を飲み込みそうな勢いがある。



「本当ですか？」


力強く発せられたその声に私は下唇を噛んだ。



惑わさないで…


私は

光瑠さんの…



「人違いです」


私を探す要さんの手を見ながら、


私は心の中で何度もごめんなさいと呟いた。


見えないことに漬け込んで、私は彼にひどいことをしている。


助けてもらったのに…


初めて恋した相手なのに…


名乗ることは出来ない。



あなたの気持ちを知った今、それはもっと不可能になってしまった…




ゴーーン───…



部屋の時計が沈黙を埋めるように鳴った。



「そうですか…」



彼はそう言いながら、
私を探す手を下ろした。



静かに私の頬に涙が流れる。


バレないように、

そっと…



「今日は帰ります。
隼人によろしく伝えてください。」



そう言って彼はステッキを床に衝く。



「また明日…」



背中を見せたままそう言った彼の元に私は寄った。



「もう……



いらっしゃらなくても大丈夫です…」



要さんのステッキを握る力が強くなったのが分かった。




「社長も……
明後日には帰ってきますものね…」


要さんの言葉にハラハラと涙が流れて止まらない。



「はい…」



私は

光瑠さんを信じると

そう決めたから…


「出口まで送ります。」


せめてもの罪滅ぼしのつもりでそんなことを私は言った。


「大丈夫ですよ」


「いいえ、送らせてください…」



そう言って、私は要さんの手を掴んだ。


光瑠さんとはまた違う大きな手。



「………では、お言葉に甘えて」



優しく微笑んだ要さんの顔から目をそらして私は要さんを出口まで誘導した。