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───────…


「では。」


要がそういうと、柔らかい手が要から離れた。


「はい…」



何故か苦しそうな真希の声を聞きながら、要は真希から背を向けた。



自分はバカだ。


錯覚を起こして社長の婚約者に胸を高鳴らせ、


挙げ句…


真希さん自身に恋してしまった──


そう気付いた要は先程の真希からの拒絶とも取れる言葉に胸を痛めた。


────────もう、いらっしゃらなくても大丈夫です…


もう会えないかもしれない。

いや、会ってはいけない──


彼女は社長の…

婚約者なのだから。



「おかえりなさいませ。」

久々の声と共に、
ガチャ…と車のドアが開く音がした。



「斎藤…」



「ご帰宅でよろしいですか？」


ようやく退院して、執事の仕事を復帰させた斎藤の問い掛けが、要には嬉しかった。


「あぁ…」


弱気な声の主人の手を取りながら、斎藤は主人の来た道を見た。


そして、目を見開いてから、要が車に乗り込んだのを見て扉を閉めた。



運転席に乗り込んで、後ろを向き、要の姿を確認する。



「有川様のところのメイドだったんですね。」



よく分からない斎藤の発言に要は眉を潜めた。



「何の話だ。」



「ですから、あの日の少女ですよ。」



「は……？」



いまいち掴めないその言葉に要は背もたれから身体を離した。



「要様がずっと、探されてた少女ですよ、先ほど玄関にいらっしゃった。」