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近くて遠い

第32章 祭り

「真希さんっ…!」



その久しぶりの声音に、私は眼を見開いた。


甘くて


優しさに満ち溢れた声……


まさか───




顔を確かめたくて、身体を離そうとするが、強く抱き締められて身動きが取れない。


だけど、

きっと…


きっと…





「かなめーー!!」



脇で隼人が声をあげたのを聞いて、

私は肩の力を抜いた。



そして
身体がふわりと離されて、

目の前にいる人を見つめた。


黒い髪がサラリとなびいていて

男らしくキリっとした顔立ち


私が…


初めて恋に落ちた人……



「お前…
隼人かっ…!!」


要さんは隼人の言葉を聞いて、視線を下に向けて目を見開き、隼人を楽に持ち上げた。



「久しぶりー!」


持ち上げられた隼人は嬉しそうに手足を動かして騒いでいた。



「似てるな…そっくりだ!」



そう言ってとびきりの笑顔を見せる要さんを、私は息が詰まりそうになりながら見ていた。



「要さんっ!」



思わず大きな声を出して呼ぶと、要さんは少し目をうるっとさせながら、しっかりと私を見つめた。



もしかして、


もしかしてっ……



「眼っ……!」




それしか言えなかった。


胸が一杯すぎて言葉が後に続かない。



要さんは片腕で隼人を抱き抱えると、もう一方の手で私の頬に触れた。




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